園芸・渓流釣り・温泉

「東谷単独釣行...3年目」



また今年も、「扇沢の黒四ダムトロリーバス駅」に到着した。天気は良し
体調も良い。不思議なもので、なんとなく上手く行きそうな気がしていた。

忘れもしない、あの「東谷2連8mの滝」が脳裏に浮かんでは消え浮かん
では消える。

水平道が開通していると見込んで、ダム下の橋を黒部川左岸に渡り、歩き
出した。荷は相変わらず重いが減らすものがないから仕方ない。

扇沢駅に通行警告看板が無いから「多分開通しているに違いない。」という
憶測だった。「水平道は整備完了で通行可能」とでも書いた看板でも有れば
助かるのだが、そういう訳には行かないらしい。大体が、毎年この場所に
性懲りもなく通う人間など極少で対象外ということか、、、。

行きあたりバッタリの出たとこ勝負、「水平道が通行出来るから看板が無い
のだろう」と、結論付けて期待に胸ふくらませ、大きく崩れたガレ場を過ぎ
勇躍しながら目的の「東谷」を目指した。

やはり汗は吹き出し、肩に荷が食い込んで痛い。小沢で何回も水を補給した。
前の失敗から塩は持参している。水を飲むたびに塩を舐めた。顔に塩の結晶
が残った。顔を手で擦るとサラサラしていて舐めると塩辛い。


例によって、背負っているザックの中身は減らしようがない。重いので弱るが、
この中には、ハーケンほか登攀用具一式、10_40mザイル、テント、シュ
ラフ、食料、カメラ、釣具一式、自炊用具一式、アタックザック、衣類、など
必需品を入れていた。

当時のカメラは、デジカメではなくフィルムカメラののCONTAX Sb2だった。
レンズはカールツァイスで高価な物、前々から欲しくて、やっと購入したカメラ
だった。

まさかデジカメに大変革するなど思いもよらず残念だが、「時代の流れだから
仕方ない」と諦めることになってしまった。思い入れかもしれないが、あの陰影
のある描写力は今でも、追従を許していないように思えてならない。

繰り返すが、目的の「東谷のイワナ確認」のために、2連8mの滝を越えて沢の
上流部に入渓するために最低これだけの用具は必要だと考えた必需品なの
である。

滝の向こう側がどんな渓相になっているか行ってみなければ判らない。必要と
思しき道具は出来る限り持ちたいのだ。

「その道具が無ければまた次の機会に持って来れば良い」と安易には決められ
ない。重くても年一回のチャンスを逃がすわけには行かない最低限の用具で
あった。


小さな尾根の上り下りを繰り返して「今年こそ何とか東谷まで行くぞ!」と念じ
ながら懸命に歩いた。行き交う人は一人もいない。独り息を切らしながら黙々
と歩いた。

ガレ場からどの位歩いたろうか、何キロという距離ではない。距離的には僅かな
道のりだったが、急に左足に異変を感じた。重く引きつったような鈍痛が歩くに
連れだんだん強さを増してきた。

構わず我慢しながら歩いていたが、先の距離を考えて休む事にした。少し休め
ば歩けるだろうと高をくくっていたが、15分ぐらい休んで歩き出すと、また
痛くなってくる。

「さあ困った、この分では無理かもしれない。」また、弱気が噴出した。


まだ午前中で陽は高く時間はあるが、この辺の黒部川本流を少し釣ってキャン
プして、朝になって足の調子が良くなれば翌日に続行する手もあると考えた。


そこで、右岸の川原の広くなった場所にテントを張ることにした。雨が降って
増水しても流されないように、やや高台の平らな場所を探した。

水平道から少し下がったところ、大きな岩が点在する隙間に丁度手ごろな
平らな場所を見つけた。「よし、ここにテントを張ろう!」

暗くなるまで時間はたっぷり有るし、ここで少し釣ってみることにした。ザック
を降ろして釣る準備を始めた。


黒部川本流ダムした左岸、先ず、第一投である。丹念に自分で作った焦げ茶色
の毛ばりを付けて上流の大岩の水際に竿先を捻って放り込んだ。

今までの経験から、一投目に大きいのがくる確率は高い。小物を掻き分けて
親分が飛びついてくるようだ。緊張の一瞬である。

案の定、毛ばりを流す間もなく九寸ぐらいのイワナが躍り出てきた。毛ばりを
くわえて上流に跳躍する。竿先を僅かに上げて合わせる。

結構強い引きであった。さすが黒部の激流に生息するイワナだけある。魚体の
幅も広い。竿を張って水面に浮かせて引き寄せた。

毛ばり釣りは普通、エサ釣りと違って掛かった瞬間強引に引っ張り上げる。
相当な大物ならともかく、水面からイワナを引っ掛けるように空中遊泳?で取
り込む。

やったことはないが、海釣りのカツオの一本釣りのような感じのようだ。その
辺がエサ釣りと違う。エサ釣りは水面下の引きを楽しめる。イワナにとっても、
空中でカラ動きするより水中での抵抗だから躍動的だ。

昔の職漁師の釣りの仕掛けが、毛バリ釣り専門だったのは必然に思えた。
毛ばり釣りは、実に効率的である。放り込み、掛ける、取り込む、放り込み、
掛ける、取り込む、の繰り返しで済むようだ。


そのあと、同じぐらいの大きさのイワナを二尾釣って釣りは止めた。ひと先ず
釣りは保留。テントを張り、食事の用意もあるからということだったのである。

火を起こしイワナを焼くことにした。イワナの腹を裂き血腸(ちわた)を丁寧に
取って、近くの枯れ枝を竹串代わりにして焚火で焼いた。

疲れすぎてあまり食欲はなかったが、飯を炊いて持参のレトルトのカレーで
簡単に済ませた。時間的には2時頃だったように記憶している。


河原での野営、疲れているから熟睡できた。翌朝4時「出発!」なんとか歩け
そうだった。

水平道の路肩に一輪、、薄紫色のマツムシソウが僅かな風に揺れて咲いていた。


ところが、暫く歩いたとき、また、左足が痛み出した。どうやら、小学生の頃に
自転車から落ちて左足のお皿に小石が食い込み、腫れて一晩中痛かった
ことを思い出した。その時痛めたのが原因かどうか判らないが、膝の内側の骨
が少し変形している。

何かのはずみで、その部分に衝撃が有ると今でも飛び上がるほど痛い。左足の
痛みは丁度そのあたりだった。

まだ東谷出合までは半分も来ていない。これから十字峡を過ぎて2時間も歩
かなければならない。痛みは一向に治まらなかった。

残念!「今回も駄目だ!」引き返す破目になってしまった。

Kちゃんと二人で一回、あとは単独で2回、今年で3回目だが、残念ながらまた
また、来年に持ち越しである。

気持ちを切り替え、来年に望みを託して帰路に就いた。

ここまで続けたらもう後には引けない!



 







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